英国籍の中国系男性2人が、中国政府のために秘密の法執行要員または情報工作員として英国で活動したと検察側が主張し、ロンドンで裁判にかけられている。

AP通信によると、被告は元香港警察官のビル・ユエン(65)と、英国の国境当局職員ピーター・ワイ(38)。検察官ダンカン・アトキンソンはロンドンの中央刑事裁判所で、2人が香港特別行政区、ひいては中華人民共和国のために「影の警察活動」に従事したと述べた。

疑惑の中心は、英国に暮らす香港系住民、特に民主派支持者を対象とした監視と情報収集である。検察側によると、2人は正規の法執行機関であるかのように振る舞いながら、香港側が関心対象者とみなした人々について情報を収集していた。

ユエンはロンドンの香港経済貿易代表部に勤務しており、検察側によれば、その役割は事務所の管理を超えていた。ワイは英国国境警備隊に勤務し、シティ・オブ・ロンドンの特別警察官でもあり、民間警備会社を経営していた。検察側は、ワイがスパイ活動の隠れみのとして機能する民間業務のために警察のシステムを利用して情報を収集し、経済貿易代表部の口座から報酬を受けていたと主張している。

AP通信の報道によると、電話のメッセージからは、2人が元香港立法会議員のネイサン・ローを監視することについて話し合っていたことが分かった。関心は国会議員や政府職員にも及び、ユエンは2023年、保守党議員イアン・ダンカン・スミスを含む著名な政治家の名前を提供していた。

検察側は、活動が2023年12月から2024年5月にかけて行われ、外国情報機関への支援のほか、住宅への強行侵入を試みた行為も含まれていたと主張している。ワイは別件で公職上の不正行為の罪にも問われている。2人はいずれも無罪を主張している。

この裁判が重要なのは、香港に関連するスパイ疑惑を英国の司法制度の中に正面から持ち込み、外国による干渉、在外コミュニティーの安全、公的部門への信頼をめぐる問題がますます敏感になっているためだ。AP通信の報道は、疑われている監視が1人か2人の孤立した標的に限られず、活動家、政治家、その他香港と中国を批判しているとみなされた人々を監視する、より広範な取り組みの一部だったことを示唆している。

今後の裁判では、検察側が説明したデジタルメッセージ、職場でのつながり、監視活動とされる行為を陪審員がどう判断するかが焦点になる。現時点で重要なのは、英国に居住し勤務しながら秘密工作員として活動したとして、国家が被告らを起訴していることだ。

この裁判はまた、英国の検察がメッセージのやり取り、職場でのアクセス権、監視活動をどこまで一貫したスパイ行為の筋書きとして陪審員に提示できるかを試すことになる。被告らが無罪を主張しているため、公判では意図、国家からの指示、そして情報収集が疑わしい接触の域を越え、外国勢力への犯罪的な支援に当たるかどうかが大きな焦点になるとみられる。

この事件は、外国による干渉と国境を越えた弾圧への懸念が英国ですでに敏感な問題となっている時期に起きた。そのため、この裁判は限定的な刑事手続きにとどまらず、在外コミュニティーへの監視を国家がどれほど深刻に受け止めているかを問うものでもある。

検察側がメッセージ、職場でのアクセス権、監視活動を外国国家による任務付与の仕組みへ結び付けることができれば、この事件は、香港の活動家と英国の機関が関係する国境を越えた弾圧および外国による干渉をめぐり、英国で行われた裁判の中でも特に重要なものの一つとなる可能性がある。