欧州連合(EU)の拡大担当委員マルタ・コス氏は、セルビア政府の航空機が、ボスニア・セルビア人勢力の元司令官ラトコ・ムラディッチの遺体を、大規模になると見込まれる葬儀のためベオグラードに移送したことを受け、予定していたセルビア訪問を中止した。

中止は2026年9月4日に報じられ、コス氏は、ムラディッチの死を賛美する動きだと自身が表現した状況と今回の決定を結び付けた。ロイターが引用したXへの投稿で同氏は、ムラディッチを巡る祝賀はEU加盟への道を支える価値観と相いれず、和解には過去と向き合い、戦争犯罪の犠牲者を尊重することが必要だと述べた。

ムラディッチはその前週、ハーグにある国連の拘禁施設で84歳で死亡した。ボスニアで1992~95年に起きた戦争中に犯されたジェノサイド、人道に対する罪、戦争犯罪で有罪判決を受けていた。ストレーツ・タイムズの報道によると、葬儀の予定が公表される前に、遺体はセルビア政府の航空機でベオグラードへ運ばれた。

セルビア国内の政治的反応は即座に表れた。ストレーツ・タイムズが掲載したロイターの報道によると、アレクサンダル・ブチッチ大統領は、コス氏の説明について「極めて短いが、いつものように愚かだ」と一蹴した。この反応は、ムラディッチがセルビアとボスニアのスルプスカ共和国で今なお意見を二分する人物であり、多くの支持者から依然として崇敬されていることを浮き彫りにしている。

葬儀自体は、家族の行事であると同時に政治的な火種として扱われている。報道によると、退役将軍の団体がベオグラード中心部の陸軍会館で追悼式典を計画している。また葬儀は月曜日にベオグラード郊外の教会で行われ、ムラディッチの娘の墓の隣に埋葬されるという。

コス氏の決定は、EUが加盟候補国や加盟を目指す国に対し、戦時中の残虐行為をたたえるのではなく、それと向き合うことを期待しているという、より広範なメッセージを反映している。同氏の公の発言からは、訪問中止の理由が日程調整や儀礼上の問題ではなく、EU加盟に必要な価値観との象徴的な決別だと同氏が受け止めたことにあるとみられる。

このため、今回の出来事は葬儀を巡る対立にとどまらない。ユーゴスラビア紛争を巡る政治が、数十年後の今もセルビアとブリュッセルの関係を形作っていることを改めて示すものだ。追悼される人物が有罪判決を受けた戦争犯罪人でもある場合、指導者の埋葬が加盟に向けた試金石になり得る。

報道はまた、セルビアの閣僚が当初、ムラディッチは国葬で送られると述べていたものの、欧州からの批判を受けた後、その点は確認されなかったとしている。その名称が付かなくても、式典が注目度の高いものになるよう明確に意図されている。EUにとっては、それだけで予定されていた訪問を外交的な意思表示へと変えるのに十分だった。

コス氏の中止決定は、明確な形でメッセージを残した。加盟プロセスは正式な改革だけを意味するものではない。地域が戦争の遺産をどう扱うかについての道義的な期待も伴う。今回、ムラディッチの遺体を故国へ運ぶという象徴的行為は、ブリュッセルから直接、公に非難を招くのに十分なものだった。