ブリストル大学とオックスフォード大学の研究者は、2026年FIFAワールドカップの中継で、健康に望ましくない食品・飲料、酒類、賭博、予測市場、暗号資産に関わるブランドが画面に登場した回数を9万3千回以上と集計した。104試合、172.6時間のプレー映像を分析し、すべての試合で該当する表示を確認したという。

対象は休憩時間のCMではなく、ピッチ脇の看板など、競技映像に組み込まれた広告だ。これらのブランドが映っていた時間は39.3時間で、プレー時間のおよそ4分の1に当たる。視聴者が表示を完全に避けようとすると、試合の一部も見逃すことになる。解析にはブリストル大学のスーパーコンピューター「Isambard-AI」が使われた。

最も多かったのは食品・飲料の6万5,722回で、全体の70.4%を占めた。予測市場は9,360回、酒類は9,266回、賭博は6,429回、暗号資産は2,632回だった。清涼飲料、ファストフード、スポーツ飲料、スナック菓子の大手4ブランドだけで、検出された該当ロゴの65%を占めている。

英国では、視聴者データを入手できた53中継について、延べ表示機会を2,670億回と推計した。これは同じ人が何度もロゴを見る機会を合算した値であり、2,670億人が視聴したという意味ではない。FIFAは別途、世界で約60億人が大会に接し、30か国以上で放送関連の記録を更新したと発表している。

研究者が特に問題視するのは、酒類や賭博、予測市場の広告規制が異なる地域に、同じ競技映像が届くことだ。報告書によれば、大量に広告を出したある賭博事業者が免許を記載していた国は約20か国だった一方、大会は220以上の地域で放送された。市場ごとに看板を差し替えるバーチャル広告技術は利用可能で、UEFA EURO 2024でも類似の仕組みが使われていたという。

チームは、スポーツ中継内の商業表示も各国の広告規則の対象とし、違反時には制裁を設けるよう求めた。FIFAには、独立した立場で設計された公益重視のスポンサー基準と、その商品を合法的に宣伝・提供できない地域での広告差し替えを提案している。

背景には、こうしたマーケティングが、とりわけ子どもや若者の飲食、飲酒、賭博行動に影響しうるという既存研究がある。ただし今回の観察研究だけで、特定の視聴者がロゴを見て行動を変えたかどうかは分からない。明らかにしたのは、世界的な競技大会における接触の規模と継続性だ。

技術は問題の可視化にも改善にも関わる。自動解析で広告の頻度を把握でき、バーチャル看板で地域別の表示を変えられる。国際的なスポンサー契約と地域の健康政策・免許制度が衝突するとき、主催者と規制当局がその技術の使用を求めるかが論点になる。