TypeScript 7コンパイラーをRustへ移植した実験的なソフトウェアが公開された。ネイティブコンパイラー、言語サーバー、プログラミングインターフェースを、そのまま置き換えられるようにすることを目指している。

Ts-rustという名称で、npmパッケージtsc-rsとして配布されるこのプロジェクトは、本件の日付である2026年10月8日に発表された。リポジトリーによると、使い慣れたtscのコマンドラインを維持しつつ、MicrosoftのGo製TypeScriptコンパイラーのアルゴリズムと挙動に沿った実装となっている。

このリリースは、9月29日時点のTypeScript 7.1開発版のリビジョンに固定されている。この点は比較の際に重要だ。挙動はTypeScript 7.0や別のnative-previewパッケージではなく、対応する開発版ビルドと照合する必要がある。メンテナーは、試したすべての実際のプロジェクトで移植版が動作したとする一方、初期リリースであることを明示し、既知の制約を確認するよう利用者に案内している。

ビルド済みパッケージはLinux x64とAppleシリコン搭載Mac向けに提供されている。Windows版とLinux arm64版はまだない。また、言語サーバーを備え、対応するプラグインを設定すると、同じ検査処理の中でEffectの診断も提示できる。クイックフィックス、リファクタリング、ホバー情報、補完支援といったエディター機能は移植されていない。

プロジェクトが公表したベンチマークでは、6つのオープンソースアプリケーションを対象に、tsc-rsはGo製TypeScript 7コンパイラーより速く型検査を完了した。報告された速度上の優位性は、幾何平均で1.61倍だった。その試験ではBunのチェッカーが全体としてさらに高速だったが、リポジトリーは診断内容の違いを指摘し、別に行ったT3 Codeの比較で利用したEffectの統合検査をBunは提供していないと説明している。

これらの数値はメンテナー自身が実施した試験の結果であり、独立したベンチマークではない。Apple M4 Pro搭載システムを使い、インクリメンタルコンパイルを無効にしたうえで、ウォームアップ後に5回測定して得られた。リポジトリーでは、比較の再現を目的とするスクリプトも提供している。

メンテナーはまた、大規模言語モデルがコードを生成したと述べている。そこには2週間で完成した新たな実装も含まれ、API料金換算で約2万4,000ドルかかったと報告している。この珍しい開発過程は、慎重な評価が必要なもう一つの理由となる。開発者は、コードを人手で1行ずつ読んだわけではないと明言している。

開発者にとって、このリリースは確立された代替品ではなく、試験可能な技術実験として扱うのが適切だ。既存のtscワークフローとの互換性とネイティブの実行性能を併せ持つ点に実用上の魅力はあるが、対応プラットフォームの不足、未完成のエディター機能、プロジェクト自身の注意喚起を踏まえると、本番利用前の慎重な検証が欠かせない。

リポジトリーはMITライセンスを採用しつつ、移植の参考にしたTypeScriptやGo標準ライブラリーの一部に関する告知を保持している。リリースにはnpmパッケージに加え、単独で利用できるアーカイブも含まれるため、標準のTypeScriptパッケージを置き換えずに評価できる。試用を検討するチームは、正確に対応する上流のリビジョンと診断内容を比較し、自らのビルドやエディターでの処理を実行するとともに、プロジェクトが示す互換性の割合を未検証のコードベースまで保証するものと受け止めないことが重要だ。