個人用アシスタントをデータ収集に転用

Metaのアシスタント「Muse」を使ったある開発者の報告は、ブラウザーベースのエージェントが、見かけ上の追加コストを抑えながら大規模なウェブ調査を実行できる可能性を示している。同時に、有用な自動化と乱用的なスクレイピングを区別しようとするサイトに、新たな課題をもたらしている。この報告は独立したベンチマークではなく個人の体験だが、具体的な作業手順と、それによって筆者が抱いた懸念を記録している。

開発者は、プロが撮影したコンサート動画を集め、アーティスト別に分類し、曲目リストを抽出するプロジェクト「fullsets.fm」を支援するためにMuseを使った。発見段階の主な課題は、小規模なYouTubeチャンネルに散在する適切な公演を見つけることだった。Museには、RedditとYouTubeで候補動画を大量に探し、アーティストの一覧を作ったうえで、出演者を1人ずつ確認するよう指示した。

Museは処理工程の後半でも動作し、ほかのAIモデルの出力を見直して、動画がプロジェクトの条件に合うかどうかの判断を助けた。利用者によると、月額80ドルのサブスクリプションで週に数十億トークン規模の作業を実行でき、トークン使用量が計上されていないように見えることもあったという。Chromeが動く管理型クラウドマシンも利用できた。これらの数字は本人の申告であり、保証されたサービス利用枠や価格性能比の測定結果と受け取るべきではない。

規模の拡大が防御上の課題に

この報告のより大きな意味は、消費者向けエージェントが、指示を継続的なブラウザー操作へと容易に変えられる点にある。クラウド上の処理は休憩を必要とせず、複数の作業を並行して実行できる可能性もある。利用者から見れば、手間のかかる探索作業が現実的になる。サイト運営者から見れば、同じ能力がサーバーに負荷をかけ、大量の情報を複製し、あるいは通常の閲覧を巧みに模倣して、規制の実施を難しくする恐れがある。

筆者は、同様のエージェントが自分のウェブサイトを対象にした場合の影響を懸念し、Metaが不正利用を制限しなければ、Museを遮断するサービスが増えると予測した。また、Amazonはすでに同サービスを遮断したと述べたが、提示された証拠には、その措置を説明するAmazonの声明は含まれていない。この実験は、記述された収集作業がすべてのサイトの利用規約やロボット向けポリシーに従っていたかどうかを明らかにするものではない。

Museがあらゆる用途に対応できると紹介されていたわけでもない。利用者は、そのSpark 1.3モデルが自分の文章作成やプログラミングの要求には適さず、作業が停止してしまうこともあったと報告した。エージェントとのやり取りや、インターフェースを通じた複数のブラウザー作業の管理も、もどかしい場合があったという。価値があったのは洗練された生成結果ではなく、大量で比較的単純な分類作業と閲覧作業だった。

こうした有用性と未完成な部分の混在は、エージェント基盤が直面しそうな課題を示している。人が日常的なオンライン作業を終えるのを助けるサブスクリプション製品も、ブラウザー、十分な計算資源、広範なモデル利用を含んでいれば、安価なスクレイピング基盤になり得る。提供企業には、利用頻度の制限、許容される利用方法のより明確な執行、サイト側が自動トラフィックを識別できる仕組みが必要になるかもしれない。一方、媒体社やプラットフォームは、どのエージェントをどの条件で受け入れるか判断する必要がある。1人の開発者のプロジェクトでネットワーク全体への影響を測ることはできないが、自律的な閲覧をめぐる議論が、仮定の話から、利用者の指示に従って継続する収集作業の話へと、すでに移っていることを示している。