Dragonの退役計画がNASAの選択肢を変える
SpaceXが、国際宇宙ステーション(ISS)に関する契約上の任務を2030年に終えた後、Crew DragonとFalcon 9による飛行を終了する計画を示したことで、NASAは地球低軌道に宇宙飛行士を運ぶ選択肢が狭まる事態に直面している。Ars Technicaが引用した業界関係者によると、SpaceXはAxiom Space、Voyager Space、Vast Spaceなど、民間ステーションを計画する事業者にも、将来の居住施設向けにDragonの有人飛行を発注することはできないと伝えたという。
この方針転換が重要なのは、DragonがNASAの運用中の米国製有人宇宙船となっているためだ。NASAはCommercial Crew Programを通じ、その開発と認証に約31億ドルを投じた。SpaceXに当初課されていたのは6回の任務だったが、すでにNASA向けに13回飛行し、近く次の飛行も予定されている。さらにCrew-17まで運用を続けることで合意している。実施済みと契約済みの飛行を踏まえると、NASAには、このシステムを無期限に延命するよう同社に迫る契約上の手段がほとんどない。
NASAのジャレッド・アイザックマン長官は、SpaceXがStarshipに注力しながら従来の機体を段階的に廃止したがっていることを公に認めた。ただし報道によれば、SpaceXは現時点で、地球から低軌道へ乗員を打ち上げるためにStarshipを開発することには関心を示していない。このはるかに大型の機体を宇宙飛行士の上昇飛行と再突入向けに認証するには、安全性や規制に関する追加の作業が必要になる。一方、NASAが当面Starshipで取り組んでいるのは、Artemis向けの月着陸型だ。
Starlinerの重要性が増す
BoeingのStarlinerは、NASAの商業有人輸送戦略を支えるもう一つの柱となるはずだった。しかし、NASAが約51億ドルを投じたにもかかわらず、まだステーションへの実運用任務を完了していない。NASAは現在、推進系の修正と、将来の任務に向けたUnited Launch AllianceのVulcanロケットの認証を支えるため、さらに3億5900万ドルを拠出する計画だ。ISSの残る運用期間にStarlinerを使い、その後は民間ステーション事業者も利用できるようにすることが目標となっている。
この方針には費用と競争上のリスクが伴う。Arsの報道では、ISS運用期間にNASAが負担するStarlinerの現行の座席単価は約9000万ドルで、最近のDragon任務の約7880万ドル、初期のDragonの約5500万ドルを上回る。Dragonがなくなれば、価格が下がる明確な理由はない。
商業有人輸送の新たな競争を実施すれば、Blue Origin、Sierra Space、あるいはほかの事業者が参入する可能性がある。ただし、追加のシステムの開発と認証には数十億ドルがかかるとみられ、NASAが優先する月探査と予算を奪い合うことになる。Boeingとの取り組みを続ければ、すでに行った投資を生かせる一方、開発で困難を重ねてきた機体へのNASAの依存は強まる。
この問題はNASAだけにとどまらない。持続可能な民間ステーション市場には、乗員や顧客を安定して輸送できる見通しが必要だ。2030年以降にStarlinerが西側の主要な宇宙船となれば、その日程、価格、信頼性は、計画中のステーションが研究機関、政府、民間宇宙飛行士を顧客として獲得できるかどうかを左右する。NASAが当初採用した2社体制は、1社への依存を減らすものだった。SpaceXの方向転換は、ISS時代が終わりに近づくまさにその時期に、この成果を逆戻りさせる恐れがある。



