開催日:2025年9月6日

ジム・ジャームッシュ監督の『Father Mother Sister Brother』がベネチア国際映画祭の最高賞、金獅子賞を受賞した。AP通信は、映画祭でより盛んに話題になっていた作品のいくつかを退けた番狂わせと評した。この映画は、成人した子どもとその親の関係を描く三部作で、アダム・ドライバー、ヴィッキー・クリープス、ケイト・ブランシェットが出演している。

映画祭前からより幅広い注目を集めていた複数の作品が出品されたなかでの受賞だったため、特筆すべき結果となった。カウテール・ベン・ハニア監督によるガザを題材にしたドキュドラマ『The Voice of Hind Rajab』は次点の銀獅子賞を受賞する一方、パク・チャヌク監督の『No Other Choice』は無冠に終わった。ジャームッシュ自身も意外性を認め、自分やほかの映画作家は競争を動機としているわけではないとしつつ、この予想外の栄誉と、自身の静かな映画に対する映画祭の反応に感謝していると述べた。

ベン・ハニア監督の作品は、映画祭で最も感情を揺さぶる上映の一つとなった。AP通信によると、2024年1月にガザ市で銃弾を浴びた車内から6歳の少女を救出しようとした試みを描き、少女がパレスチナ赤新月社にかけた電話の実際の音声を使用している。プレミア上映後には22分間のスタンディングオベーションが起き、ベン・ハニア監督は赤新月社と、ガザで他者を救うため命を危険にさらしている人々に賞をささげた。また、現地の耐え難い状況を終わらせるよう発言の中で訴えた。

映画祭の演技賞と技術賞も同様に幅広い作品に贈られた。中国の俳優シン・ジーレイは、広州の搾取工場の世界を舞台に三角関係を描いた『The Sun Rises on Us All』で女優賞を受賞した。イタリアの俳優トニ・セルヴィッロは、パオロ・ソレンティーノ監督の『La Grazia』で任期末の大統領を演じ、男優賞を受賞した。ベニー・サフディは『The Smashing Machine』で監督賞を受賞した。同作は総合格闘家マーク・カーの伝記映画で、主演のドウェイン・ジョンソンをめぐっては、すでにアカデミー賞候補入りの話題が高まっている。

ヴァレリー・ドンゼッリとジル・マルシャンは、成功した写真家が執筆に専念するためすべてを捨て、貧困に陥る姿を描いたフランス映画『At Work』で脚本賞を受賞した。審査員特別賞は、ナポリを叙情的に描いたドキュメンタリー『Below the Clouds』のジャンフランコ・ロージに贈られた。スイスの俳優ルナ・ヴェドラーは、『Silent Friend』で若手俳優を対象とするマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞した。

受賞者の顔ぶれには、アレクサンダー・ペインが審査委員長を務め、フェルナンダ・トーレス、モハマド・ラスロフ、ステファヌ・ブリゼ、マウラ・デルペロ、チャオ・タオ、クリスティアン・ムンジウが名を連ねた今年のコンペティション部門審査員の多様性も反映された。全体として受賞作は、親密な人物描写、政治的な緊急性、賞レースで注目される大作の間で映画祭が分かれたことを示している。しかし、この夜最大の驚きはやはりジャームッシュであり、より派手な複数の作品が受賞を逃すなか、控えめな作風の作品が最高賞を獲得した。