AIを活用した脆弱性発見の急速な進歩により、広く使われているソフトウェアへのハッキングが難しくなり、政府が意図的なアクセス手段を要求する動きが再燃する可能性があると、暗号学者マシュー・グリーンは2026年8月14日に発表した論考で主張した。一見逆説的なのは、防御面のセキュリティー向上によって、法執行機関や情報機関が暗号化された端末にアクセスするために利用する欠陥が減る可能性があることだ。

この議論は、電話の傍受からスマートフォン内に保存されたデータへの移行を出発点としている。アップルは2010年にパスコードから生成されるiPhoneのストレージ暗号化を導入し、翌年にはメッセージのエンドツーエンド暗号化を導入した。一方、ワッツアップは後に、10億人に迫る利用者に対し、暗号化されたメッセージと通話を標準設定とした。こうした変化により、従来型の傍受や端末へのアクセスは制限された。

2014年、FBI長官ジェームズ・コミーは、暗号化通信へのアクセスを巡る公の議論を促す「Going Dark」運動を開始した。この対立は2016年、テロ攻撃後にFBIがiPhoneを開くためアップルに協力を求めたことで具体化した。アップルは抵抗したが、外部企業が端末のハッキングを申し出て、メーカーにアクセス手段を構築させる以外の選択肢があることを示した。

その後の10年間で、政府機関は携帯電話のロック解除に用いるGrayKeyや、遠隔攻撃に用いるNSOグループのPegasusなど、標的型のツールを購入した。アップルとグーグルは公表された脆弱性を修正する一方、脆弱性研究者やエクスプロイト業者は別の脆弱性を見つけ続けた。グリーンは、政府機関が案件ごとにアクセス手段を購入できたため、この市場が正式なバックドアを求める差し迫った圧力を弱めたと主張している。

AIはその均衡を崩す可能性がある。この論考は、2026年4月に発表されたAnthropicの「Mythos」というモデルについて、ソフトウェアの欠陥を見つける能力が異例に高いとしている。米国政府は一時的にその輸出を制限したが、OpenAIや、Z.ai、Moonshotを含むオープンウェイトの開発者による同等の研究は、単一の研究所がこの能力を独占することはないと示唆した。これらの主張は筆者による説明であり、提供された資料には独立したモデル評価は含まれていない。

防御側は、同じ能力を古いコード全体に適用し、リリース前の継続的インテグレーション・システムに自動スキャンを組み込むことができる。グリーンは、大規模で適切に保守されているソフトウェアでは、遠隔攻撃に利用できるバグの供給が2年以内に大幅に減る可能性があると予測している。すべての欠陥を発見できるわけではないと認めており、これはバグのないソフトウェアではなく、有用なエクスプロイトが希少になるとの予測だ。

標的型ハッキングの信頼性が大幅に低下すれば、政府機関は再び、製品に「例外的アクセス」を組み込むよう企業に圧力をかける可能性がある。セキュリティー研究者は、一つの当局のために構築された意図的なアクセス経路が、犯罪者や敵対国の標的にもなり得ると長年警告してきた。したがって、この論考が懸念しているのはパッチ適用の改善そのものではなく、政府が代替的な監視経路を失った際の政治的対応だ。

結果は依然として不確かだ。AIシステムは攻撃側と防御側の双方を支援でき、ソフトウェアの複雑さは新たな欠陥を生み続け、エクスプロイトがどの程度利用可能かは不透明だ。グリーンの分析は、政策上のフィードバックループを指摘している。自動化された発見がパッチ適用を加速させ、脆弱性の希少化が標的型アクセスのコストを押し上げ、そのコストが、本来安全なシステムを設計段階から弱体化させるよう求める圧力を強める可能性がある。